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エコハウスの概観 パッシブ設計編【エコハウスシリーズ】

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今回は、松尾式エコハウスで大切な3つの設計ポイントの内2つ目のポイント、「太陽に素直な設計」についてです。

それは、パッシブ設計と言われる設計手法のひとつで、建物の設計に太陽、風、河川など自然の力を積極的に利用することで生活に掛かる光熱費を抑制することです。住宅建築におけるパッシブ設計では、太陽光や太陽熱の利用、日射のコントロールが採用されることが一般的ですが、エコハウスでは、太陽光の利用による自家発電と日射をコントロールすることで陽射しを避けたり取り入れたりする事を重視しています。


【エコハウスシリーズ】

①エコハウスで木造住宅のスタンダードを目指す

②エコハウスの概観 冷暖房設計編

エコハウスの概観 パッシブ設計編

 

 

太陽の動きを正確に捉える

日射をコントロールするには、規則的な太陽の動きを正確に知る必要があります。そのためには、日影図(にちえいず・ひかげず)を利用します。

日影図は、太陽によって生じる建物の影の動きを図示したもので、ビルやマンションなど高層建築物では、周辺に及ぼす日影の影響を考慮する義務「日影規制」に抵触しないことを示すため、建築確認申請書類に日影図を添付します。住宅規模では、軒高7m超や地上3階建以上の建物を第1種低層住居地域か第2種住居低層地域に建てる場合にしか関係しないので、一般の方にはもちろん建築業者でも2階建までの住宅建築が多い場合はあまりなじみがありません。しかし、この日影図で建築予定地に落ちる近隣(主に南側)の建物からの影とその動きが正確に分かるので、当社が採用する松尾式エコハウスの設計では日影図を標準的に用います。

 

日影図の種類と役割

■時刻日影図

建物のある時間における日影を30分または1時間ごとに描いたもの。

時刻日影図
画像:株式会社建築ピボット様HPの図を元に当社で加工。

青色の線で囲われた部分が、表示時刻における隣地建物からの日影の形状と範囲。建築予定地の何時にどこにどの程度の日影が落ちるのかが分かります。例えば、2時頃まで日影が落ちない場所を物干スペースとするため建物を配置しない様にする、などを判断したりできます。

 

■等時間日影図

建物によって一定の時間以上日影となる部分を図示したもの。

等時間日影図
画像:株式会社建築ピボット様HPの図を元に当社で加工。

赤色の線で囲われた部分が、一定の時間以上日影となる部分。図では、赤色の線の外側が3時間以上、内側が5時間以上日影となる部分を指しています。例えば、なるべく1階リビングを明るく保つため3時間以上日影となる箇所を避けて建物を配置する、などの判断ができます。

 

この様に、日影図を描くことによって建築予定地にいつどれくらいの影がどれくらいの時間落ちるのかを正確に捉えられるので、陽当りを考えながら計画建物の形状や配置を検討することができ、より現実的なプランニングが可能となります。

 

太陽熱をコントロールする

上記は、建物の形状や配置計画に関わるものでしたが、今度は建物に当たる太陽光による熱のコントロールについてです。

太陽熱は、夏はなるべく避け、冬はなるべく取り込みたいもの。その為には、庇と窓の設置計画が大きく影響します。

 

庇でコントロール

まず、高い角度から射し込む夏の太陽からの日射は、南側の窓の上に設ける庇でカットします。特に、窓に接してウッドデッキや土間などが設けられている様な間取りでは、そこへの陽射しをどうコントロールするかによって、庇の長さを検討します。

夏の太陽からの日射は、南側の窓の上に設ける庇でカット

庇に覆われるほどのウッドデッキや土間は、半ば外、半ば内と言える半外空間となります。陽射しを遮りながら外の爽やかな空気を感じて過ごしたり、雨の日でも窓に直接雨がかからず、気持ちに余裕のある過ごし方ができたりします。

庇に覆われるほどのウッドデッキ

 

 

また、冬季は太陽高度が低いため、庇が太陽光を遮らず、効率よく室内に太陽熱を取り込めます

冬季は太陽高度が低いため、庇が太陽光を遮らず、効率よく室内に太陽熱を取り込めます

一見当たり前と思うかもしれませんが、庇を経験や慣習で付け、庇としての用を為していないという建築も多いのが現実です。庇は、しっかりと考えて設置すればとても効果的に太陽光をコントロールできるツールとなるので、エコハウスの設計でも重視しています。

 

窓でコントロール

太陽光は、窓を通じて室内に入ります。しかし、冬は太陽の熱を積極的に取り込みたいものの、夏は強烈な日差しが室温を上昇させるのを避けたいところです。

南側からの太陽光は、庇によって夏と冬を分けてその入り方をコントロールしますが、北側、東側、西側の窓からの太陽光は、窓の大きさとガラスの種類によってコントロールします。

 

■大きさでコントロール

居室でない部屋は、断熱性能を優先し(※)、なるべく小さくします。
(※ きちんと断熱材が入った壁は、どんな窓よりも断熱性が高いため。)

廊下等非居室の日射を考慮した大きさの窓廊下等非居室の日射を考慮した大きさの窓

 

■Low-E(ローイー)ガラスの種類でコントロール

基本はLow-E遮熱タイプ。北西角と北東角の部屋の東西面はLow-E断熱タイプとし、更にアウターシェードを付けます。

 

Low-Eとは、複層(ペア)ガラスサッシのどちらかのガラスの内側に設置した薄い金属膜で、どちらのガラスに設置しても断熱性能が向上する上、室外側ガラスの内側に設置するタイプは更に遮熱性が向上するため、これを遮熱タイプ、もう一方を断熱タイプと呼びます。

Low-Eガラスについて、詳しくはコチラもどうぞ。

Low-Eガラス画像:YKK AP様 HPの画像を弊社で加工

 

また、エコハウスでは基本中の基本なので今回の記事では触れませんが、ガラスを支える枠材は樹脂製が大前提です。アルミ枠はもちろん樹脂とアルミの複合枠もお勧めしていません。

 

 

太陽光発電の設置

エコハウスのパッシブ設計による「太陽に素直な設計」で、もう一つの重要な取り組みです。

太陽光発電を設置した平屋

 

太陽光発電は、事業用も住宅用も総じて設置費用が大幅に下がっており、新築住宅であれば、2012年に1kW当り約43万円だったものが2022年には約26万円と40%も下がっています。(システム費用のみ)

住宅用太陽光発電のシステム費用の推移とその内訳出典:経産省HP「調達価格等算定委員会「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」について」のダウンロード資料より。

この事から、太陽光発電は以前よりも費用回収期間がかなり短縮されることとなり、また災害時にも自家発電で生活を維持できる設備であることから、住宅建築におけるQOL(Quality of life=生活の質)の向上に効果的な選択肢のひとつとなりつつあります。

 

現実的な費用回収期間

実際の設備として5kWの太陽光発電のシステム(設備)費、工事費、諸費用を含めた導入費の回収計画を見ると、必要とする電気を自家発電と買電で賄いつつ余剰電力を売電して収入に回すとすると、わずか13年で回収完了、14年目以降は収益のみとなります。

住宅用太陽光発電シミュレーション

導入費:約180万円・・・①

節約電気料金:137,327円(年間)・・・②(表の赤枠)

導入費回収年数:①/②=13.107… → 約13年

 

もちろん、長期に渡る自家発電は地球環境への負担軽減にも大きく貢献します。

 

また、太陽光発電の余剰電力を使って昼間にお湯を沸かすことで、従来の夜間貯湯による放熱ロスを減らしつつ電気代も節約できる給湯器もご提案しております。

 


次回は、エコハウスで大切な設計ポイント3つの内の最後、「建物の高断熱化」についてです。次回の記事で、当社の取り組むエコハウスについての全体像の概観が完結します。どうぞ、お楽しみに!

 

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②エコハウスの概観 冷暖房設計編

設計者ブログ「松尾式エコハウス実現に向けて本格始動」

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