もし家を建てるなら

2026年7月28日、熊本県を最大震度7の地震が襲いました。平成28年(2016年)熊本地震から10年。同県内で再び震度7を観測した地震です。
このコラムでは、公的機関の発表と報道をもとに、「家はなぜ壊れたのか、あるいは壊れなかったのか」「太陽光・蓄電池は実際どう機能したのか」「電気以外に何が起きていたのか」を、数字で確認していきます。
はじめに
令和8年熊本地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
社員一同、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。
1. 被害の全体像
熊本県の発表(2026年8月9日18時時点)では、県内の住家被害は20,740棟です。

| 区分 | 棟数(2026年8月時点) |
| 全壊 | 699棟(3.4%) |
| 大規模半壊 | 20棟(0.1%) |
| 半壊 | 1,025棟(4.9%) |
| 一部破損 | 7,876棟(38.0%) |
| 分類未確定(調査中) | 11,120棟(53.6%) |
このうち11,120棟(全体の約54%)は、まだ全壊・半壊・一部破損のどれに該当するか分類が終わっていません。全壊699棟・半壊1,045棟という数字は、この時点での速報値です。今後の調査で、未確定分から一定数が全壊・半壊に移行します。
過去の大地震との比較は次の通りです。

| 震災名 | 全壊棟数 | 半壊棟数 | 住宅総数に対する半壊以上の割合 |
| 阪神・淡路大震災(1995) | 104,906棟 | 144,274棟 | 11.9% |
| 東日本大震災(2011) | 約129,000棟 | 約265,000棟 | ー(津波被害が主のため参考値なし) |
| 平成28年熊本地震(2016) | 8,657棟 | 34,719棟 | 5.4% |
| 令和6年能登半島地震(2024) | 6,536棟 | 23,693棟 | 5.5% |
| 令和8年熊本地震(2026年8/9速報値) | 699棟 | 1,045棟 | 0.2% |
熊本県の総住宅数に対する「全壊+半壊」の割合は、今回8/9速報値でおよそ0.2%。平成28年熊本地震(5.4%)の約1/27、阪神・淡路大震災(11.9%)の約1/60です。未確定分の移行を織り込んでも、過去の大地震と比べて被害率が低い水準にあることは変わりません。
2. 家が壊れなかった理由

2016年の熊本地震のあと、国土交通省は益城町中心部で住宅の悉皆調査を行い、建築時期(=適用された耐震基準)ごとに倒壊・崩壊率を集計しました。
住宅性能表示制度で「耐震等級3」の認定を受けていた木造住宅16棟のうち、14棟(87.5%)が無被害でした(残る2棟は軽微・小破)。
このデータは2016年・益城町中心部という、震源直上の激甚被災エリアで得られたものです。今回(令和8年)の熊本県全体の被害率とは、対象エリアも地震の規模も異なります。それでも、耐震基準が新しいほど倒壊・崩壊率が下がるという傾向自体は、2016年の調査で明確に示されています。
なお、2016年の熊本地震では震度7の揺れが2回(前震・本震)観測されました。今回はM7.1の単発です。同じ震度7でも、繰り返し受けた揺れと単発の揺れでは建物へのダメージの蓄積が異なります。今回の被害率が低かった背景には、この揺れ方の違いも関係しています。
3. 「基準を満たすこと」と「その通りに造られていること」の違い
上の表にある通り、2000年基準を満たしていた木造住宅319棟のうち7棟(2.2%)が倒壊・崩壊しました。国土交通省の調査では、このうち3棟の原因は、柱の引き抜けを防ぐ接合金物が仕様通りに施工されていなかったことでした。
つまり、高い耐震性能を設計上持っていても、施工が仕様通りに行われていなければ、その性能が発揮されない例が実際にありました。
国土交通省の報告書には、隣接する2棟の木造住宅を比較した事例があります。片方は地盤補強のため鋼管杭を打っていましたが1階部分が崩壊し、地盤改良をしていなかったもう一方は、隣家の塀にもたれかかる形で倒壊を免れました。
倒壊を免れた住宅に共通していた要因は、次の5点です。
– 耐震等級3など、基準より余裕を持った設計性能
– 接合部の金物施工が仕様通りに行われていたこと
– 地盤条件に応じた適切な対応
– 耐震診断・耐震改修を受けていたこと(旧耐震住宅の場合)
– 増改築時に構造計算をやり直していたこと
今回については、日本建築学会災害委員会が被害調査を進めています。専門家によるシミュレーションでは、古い耐震基準で建てられ耐震性能が劣る建物は、今回の揺れで倒壊してもおかしくない強さだったと分析されています。報道でも、築年数の古い木造住宅の倒壊、鉄筋コンクリート造建物の構造被害が確認されています。
耐震等級3を標準とする住宅会社の建物(築4年)で、内装のひび割れが話題になった例もありました。写真から確認できるのは内装と家財の状態であり、柱・梁・基礎などの構造躯体の損傷有無は、現地調査でなければ判断できません。
4. 太陽光・蓄電池:機能した家、しなかった家
停電は熊本県内で最大約4万7千〜4万8千戸に及び、高圧配電線の全面復旧までおよそ3日でした。
太陽光のみを設置していた住宅では、日射があるあいだ、冷蔵庫や扇風機を自立運転用コンセントから確保できたという声が複数ありました。多くの機種で取り出し口は1口・AC100V・最大1,500Wという制限があり、夜間は発電がゼロになります。
太陽光+蓄電池を導入していた住宅では、明暗が分かれました。設置工事直後に被災し、停電の瞬間に自動で蓄電池へ切り替わったという体験談がSNSで拡散した一方、「蓄電池を入れていたのに、エアコンが動かなかった」という声も同程度に拡散しました。

明暗を分けたのは、容量や金額ではなく次の6点です。
1. 自立運転への切替が自動か手動か
2. 定格出力(同時に使える量)が家電に見合っているか
3. 特定負荷型(決まった2〜4回路のみ)か、全負荷型(家中の回路が生きる)か
4. 200V機器(エアコン・IH・エコキュートなど)に対応しているか
5. 停電発生時点での蓄電池の残量設定
6. 停電中に太陽光から蓄電池へ充電できる機能があるか
「蓄電池を入れたのにエアコンが動かない」という声の多くは、④の200V非対応、または③の特定負荷型でエアコン回路が非常用に組まれていなかったことが原因でした。
5. 断水:停電より長引いた問題
電気の復旧が実質3日間だったのに対し、断水はより長く続きました。熊本県内の断水は発災直後の最大約14万戸から始まり、8月6日時点でもなお約3万6千戸が断水していました。県内全域での解消は8月末が見込まれていました。
報道では、断水地域で風呂に入れず、離れた避難所でトイレを済ませていた住民の様子や、給水車に並んで水を運ぶ作業で腰を痛めたという声が伝えられています。上天草市では、自分の住む地域が直接被災していなくても、水を供給する浄水場が別の自治体で被災したことで断水が生じました。
6. まとめ
– 今回の全壊+半壊率(速報値)は、過去の大地震と比べて低い水準にある
– 2016年のデータでは、耐震基準が新しいほど倒壊・崩壊率が下がっている
– 基準を満たした設計でも、接合部の施工品質が伴わなければ倒壊した例がある
– 太陽光・蓄電池は、導入の有無ではなく仕様と設定で明暗が分かれた
– 停電(数日)より断水(数週間)のほうが長期化した
アイジースタイルハウスが行っている対策
家づくりの現場で確認すべきことは、耐震基準を満たしているかどうかだけではありません。一棟ごとの柱・壁の強度を計算する「許容応力度計算」を行い、その計算通りに施工されているかを現場で確認すること。
あわせて、地震のエネルギーを吸収し、繰り返す揺れによる構造材へのダメージを抑える制振装置「evoltz(エヴォルツ)」を標準採用し、本震後の余震にも性能が落ちにくい構造としています。
太陽光・蓄電池を提案する際は、自動切替・全負荷対応・200V対応・停電時充電の可否を、契約前に仕様として明示すること。
私たちは、こうした点を標準の確認項目として設計・施工・引き渡しの各段階で運用しています。
自宅の耐震性能や設備の仕様について確認したい方には、個別の相談の場も用意しています。

アイジースタイルハウス浜松スタジオ外観
出典:熊本県、国土交通省、総務省消防庁、気象庁、日本建築学会災害委員会、熊本日日新聞、西日本新聞、NHK、日経クロステック、レスキューナウ危機管理情報センター、東京海上ディーアール、各種報道機関のX(旧Twitter)公式アカウントほか。数値は各機関の公表時点のものであり、確定値は今後変わる可能性があります。
この記事を書いた人
山田 一輝| 株式会社アイジーコンサルティング 建築企画課
自然素材の家づくりの素晴らしさを一人でも多くの方にお届けするため、オーナー様へのインタビュー活動をライフワークにしています。
この記事の監修
林 行信|一級建築士
本記事における「構造計算(許容応力度計算)」の重要性や、制振装置「evoltz」による性能保護、漆喰の調湿効果について、専門的な観点から監修を行いました。