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軸組+パネル工法はスゴイのか!?

2022.1.05

「軸組+パネル工法」は、木造住宅建築の代表的な工法である「軸組工法」と「ツーバイフォー工法」のイイトコ取りをしていると言われます。軸組工法は、国内では古くから採用されている伝統的なもので、ツーバイフォー工法は、19世紀にアメリカで開発されたものです。
それぞれ、建物の強度に関わる構造の考え方が全く違い一長一短があり、単純比較でどちらかが優れているとは言い難いものです。
今回は、両工法のハイブリッドとも言われる「軸組+パネル工法」を客観的に見て行きます。

軸組+パネル工法はスゴイのか?

 

 

 

1.軸組+パネル工法の基本的な考え方

軸組+パネル工法は、軸組工法の構造強度を担う「骨組」(=軸組)に、ツーバイフォー工法の構造強度を担う主要部分の「面材」(=パネル)を取り付けた工法です。(下図参照)

 

軸組+パネル工法のイメージ

 

軸組工法は、建物に掛かる縦方向の力(自重や積載荷重など)を支える柱(鉛直材)と横方向に掛かる力(地震時の横揺れや暴風など)を支える梁や桁(横架材)で四角形の骨格(構造体)を組み上げる工法です。上の図から「面材」の無い状態の構造体(軸組)を指します。強度を上げるため、図にもある様な斜め方向に入れる筋交(すじかい)という材料も要所に入ります。国内ではその歴史の長さから在来工法とも呼ばれます

 

一方、ツーバイフォー工法は、その骨格に当たる材料にツーバイフォー(2インチ(約5.1センチ)×4インチ(約10.2センチ))というサイズの木材を使用します。他にも、2×6(ツーバイシックス)や2×8(ツーバイエイト)などの種類があります。
軸組工法の柱や梁などと比べ厚みの薄い材料で骨組を作るため(下図参照)、骨組の表と裏を面材(=パネル)で挟むことで構造強度を確保します。建築の教科書などでは枠組(わくぐみ)壁工法と表記されます。

ツーバイフォー工法のイメージ

 

 

軸組+パネル工法は、軸組工法による骨組とツーバイフォー工法のパネル材を合わせたもので、軸組の太い骨組に加えその枠の変形を抑えるパネルを組み合わせることで両方の工法のメリットを備えた工法と言えます。
ただし、この工法で使用するパネル材の設置個所は構造体の外周部(外壁)のみで、間仕切壁(部屋と部屋を仕切る壁)を含む全ての壁にパネルを設置するツーバイフォー工法とはこの点が異なります。

 

2.各工法のメリットを活かした工法

現代の軸組工法は、その骨組の接合部(材料のつなぎ目)を金物で補強しており相当な強度に耐えますが、「枠」である限りどうしても変形の問題がつきまといます(下図の左側の図)。この点ツーバイフォー工法は、パネル(面材)という変形しにくい形状特性により、軸組工法よりも建物強度を高くしやすいというメリットがあります。

軸組+パネル工法は、このツーバイフォー工法のメリットを活かしたもので、建物強度に大きく影響する外壁面にパネルを設置することで、強度限界を向上させることができます。(下図の右側の図)

 

他方、建物の構造に及ぶ様な増改築工事をする場合、ツーバイフォー工法では全ての壁が構造耐力壁と扱われるためほぼ対応不可能ですが、軸組工法では、設計時に特定した壁のみを耐力壁とするため、他の壁は撤去するなどの柔軟性があります。軸組+パネル工法では、パネルを設置した外壁全てを耐力壁とする訳ではないため、軸組工法の増改築対応能力の高さというメリットを活かした工法と言えます。

 

つまり、軸組+パネル工法は、ツーバイフォー工法の強度上のメリットと軸組工法の増改築工事の対応の柔軟性というメリットを活かした工法と言えます。

 

3.正式な工法名称ではない

軸組+パネル工法は、日本の伝統的な工法に海外の工法の良さを取り入れた工法と言えますが、建築学で分類する工法としては、独立した一つの工法としては扱われていません。実際の工事でも、自治体に提出する書類などで「軸組工法」として扱われます

メリットが大きそうなこの工法なのに、なぜなのでしょうか?

 

答えは、簡単です。それは、既存の工法と大きな違いがあるとは言えないからです。

 

建築の教科書などでは建物の構造として、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造、RC(鉄筋コンクリート)造、S(鉄骨)造、木造に分けられ、木造は更に軸組工法と枠組壁工法(ツーバイフォー)に分類されます(他の構造も実際には細分化されています)。これらは、使用する材料と構法の観点からそれぞれ「異なる構造」として扱われていますが、同じ観点でみた場合の軸組+パネル工法は、軸組工法に別の材料をちょっと付加しただけの工法であり軸組工法に変わりないという考えから、個別の工法として扱われないのです。

 

ただし、軸組+パネル工法のメリットは先に述べた通り、耐震強度上のメリットも建築後の可変性の高さというメリットがあるのも事実なので、輸入住宅やツーバイフォー工法に特化していない限り、国内の木造建築会社のほとんどはこの工法を採用しています

 

という事は、特段、他社との差別化された特徴にはならないとも言えます。

 

 

4.建築会社ごとに異なる扱い

さて、メリットがあり多くの木造建築会社が採用するけれども、決して特別ではないこの軸組+パネル工法ですが、建築会社によってその扱いが異なっています。例えば、HPで、木造住宅建築における何かスゴイ工法の様なアピールをしている会社があるなどです。

軸組工法やツーバイフォー工法、その他明確に分類された工法に惚れ込み、その工法自体の良さを伝えるのであれば納得もできますが、軸組+パネル工法を強調するのは、車の購入に例えて言えば「標準で付いている『自動ブレーキ(AEBS)』を『スゴイ機能!』として強調している。」くらい違和感があります。

 


念のために申し上げておきますと、弊社アイジースタイルハウスでは、軸組+パネル工法を採用していますが、HPには記載しておりません。さらに、構造強度を上げるパネル材にもこだわった材料を採用していますが、そのページもありません。(ここは、豆知識ブログ担当者的に「そこくらいはページを作りたい。」と思うのですが(笑)。)

 

5.工法だけでなくバランスが大切

やり直しが効かない住宅建築では、どんな項目でも最高の選択をしたくなりますね。気持ちはよく分かります。しかし、実際の建築計画では、色々な検討をする際、優先順位を付けながら決定して行くことになります。中でも建物の強度、特に耐震性に関わる部分は生命に関わる最重要事項ですから、工法の選択には慎重になってしまいがちです。

 

しかし、ここで大切なのは「最高の選択」ではなく「最適な選択」をすることです。
例えば、耐震や耐火という安全性のための最高の選択を考えるのであれば、頑丈で燃えない鉄筋コンクリート造一択でしょう。燃える木造の入る余地はありません。しかし、実際の住宅の火災発生率や、大地震でも倒れずその後も生活可能な木造住宅があることに考えを広げると、自分にとっての最適な選択は他にもありそうだと気づくことができます。すると、日々の暮らしの快適性を重視するなら、冬場の結露発生の実態から今度は鉄筋コンクリート造を選択肢から外すことになるかも知れません。

 

これらから我が家の建築をお考えになるのであれば、そんな感じで物事をバランス良く判断していく目を養って行かれると良いと思います。

 

工法の選択一つとっても、耐震性を重視しての選択はそれほど重要ではありません。なぜなら、軸組工法でもツーバイフォー工法でも、きちんとした構造計算を行うことで相応の強度を持つ構造設計ができるからです。例えば、弊社が採用する軸組工法における構造計算では、震度7の地震が連続発生しても倒れない強度をクリアする様にしています

つまり、耐震性を考えた場合の工法選択であれば、どの工法にするか?よりも、どんな強度をどんな方法によって裏付けているか?を知る方がはるかに重要なのです。

 

アイジースタイルハウスでは、ブロックプランという構造計画を採用した上で構造計算を実施、更に耐震シミュレーションによる視覚的な確認も全棟実施しております。
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豆知識くん

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