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陶器の瓦は耐震性が心配!?と言う論点のズレ

2018.8.02

日本の木造住宅の代表的な屋根材と言えば陶器の瓦ですね。

しかし、土を焼いて作る昔ながらの陶器瓦には、その重量感から耐震性を心配する声を伺うことがあります。

現在の陶器瓦の耐震性は、屋根の軽量化や施工方法の改良によって、1995年の阪神淡路大震災レベルでもズレ落ちたりしないほどの性能が確かめられています。

重量だけなら、もちろん陶器瓦以外にいくつかの選択肢があります。しかし、陶器瓦は、日々の暮らしを快適にしてくれる様々な性能も兼ね備えている優れた建材でもあります。

住宅建築にあたり、「重量」だけにこだわって、日々の暮らしを犠牲にしてしまわない様、冷静に判断することが大切です。

1.陶器瓦は重いのか?

そもそも陶器瓦は「重い」のでしょうか?

確かに、昔の陶器瓦の施工方法は「土葺き工法」(屋根を仕上げる事を「屋根を葺く(ふく)」と言います。)と言い、瓦の下に大量の土を載せ、そこに瓦を押し付けて仕上げて行く方法で、瓦以外の材料による重量が加算され、非常に重かったのは確かです。
また、瓦は土の上に載っているだけなので、地震の際には1枚ごとにズレ落ちやすいと言う特徴がありました。

土葺き工法の例

しかし、現在では「引掛桟葺き工法(ひっかけさんぶきこうほう)」と言う改良工法が主流です。

土は載せず、代わりに木の桟を取り付け、これに瓦を引っ掛ける様に葺いて行きます。瓦は桟に引掛けるだけでなく、専用の釘やビスで留め、瓦同士もツメの凸凹によって結合され、地震の際にも屋根面全体で揺れに耐える様にしています。

では、土葺き工法と引掛桟葺き工法との屋根重量を比べてみましょう。
仮に、延床面積30坪(99.37㎡)の総二階(長辺:9.1m、短辺:5.46m)に掛かる切妻屋根の実面積(71.29㎡)とします。(下図)

上記の通り、土葺き工法5,290kgに対し引掛桟葺き工法が3,770kgと約7割の重量に留まっています。

昔の建物では、葺き土が重量増加にかなり影響していたことが分かります。

 

さて、ここで良く比較に出されるのが、ローコスト住宅などで良く採用されるスレート瓦。

セメントを主成分とした新建材です。

同じ条件で計算すると、この屋根の総重量は1470kgと、引掛け桟葺き工法の半分以下!

と言うことで、結論。

「陶器瓦は重い」・・・です。

「重いんかい!」って、突っ込みましたね!?

しかし、これこそが論点のズレなのです。

それは、軽量なスレート瓦や金属屋根と比較した場合と言うところ。

つまり、屋根材の重量による耐震性の優劣はあっても、重量そのものが耐震性の強弱を示すことではない。というところが非常に重要なのですね。

 

2.陶器瓦は耐震性が低いのか?

瓦の重さが気になるのは、耐震性が心配だからですよね?

ここで

重い屋根 ≠ 低い耐震性 (重い屋根が耐震性が低いことにはならない)

と言うことにぜひ注目してください。

屋根の重量は軽い方が有利なのは確かです。

しかし、大切なのは建物が全体として耐震強度があり、バランスが良いか?と言う点です。

そして、今の建築では、陶器瓦だろうが金属屋根だろうが、その仕様における耐震性が確保できる内容になっているのです。

つまり、スレートや金属と比較して重い陶器瓦の場合、それに見合った耐力壁の設置が法的に要求されており、その要件を満たさない限り、行政の確認申請が通ることはありません

これはこれで有効なセーフティポイントになってはいます。

ところで!

実は、そこよりも耐震性能の優劣は見るべきポイントが他にあり、そちらの方が断然重要なのです。

そのポイントと言うのが、1階と2階の柱や耐力壁の位置がどれだけ一致しているかを表す「直下率」です。


「ブロックプラン」と言うのは今回は無視して下さい。
左の図と比べて、右の図では1階と2階の柱の位置が一致しており、地震の力が効率よく地面に伝わる様子が分かりますね。

地震の際に、その揺れに抵抗する役目を持たせた壁を「耐力壁」と言いますが、それも同じ理屈で直下率が高い方が耐震性は有利です。

ところが、この直下率については、現行の建築基準法には規定が無いのです!

なぜ、現行の建築基準法に規定が無い直下率が耐震性を見る上で重要なのでしょう?

それは、2016年に起きた熊本地震による被害で明らかになりました。

 

3.明らかになった直下率の重要性

熊本地震では、建築基準法をクリアし行政の確認申請も通った建物であるにも関わらず、想定内の震度でも倒壊(または半壊)してしまった事例が発生し、木造建築業界を揺るがしました。

 

実際、軽い屋根であるはずのスレート瓦の家が倒れています。

■耐震性能住宅の盲点 「2000年基準」倒壊の理由(日経ホームビルダー)

■「2000年基準」も3~4割大被害、筋かい破断など多発(日経ホームビルダー)

2000年基準と言うのは、1981年に大幅改正された建築基準法の構造規定が1995年の阪神淡路大震災を受けて更に厳しく改正されたものです。
熊本地震では、その厳しい基準をクリアした建物が予想に反して倒れたのです。

 

そこで、原因として指摘されたのが直下率です。

■新耐震住宅なぜ倒壊(2)現行基準の問題点(日経ホームビルダー)

つまり、いくら現行の建築基準法を守ったところで、その法律では規定されていない耐震性能(=直下率)の方が建物の倒壊に大きな影響を及ぼしたと言う事実が明らかになったのです。

 

4.屋根の重さをはるかに凌ぐ、直下率の重要性

地震当時は、陶器瓦の住宅の方が多い事から倒壊している建物にもそれが目立ち、重い屋根が建物の倒壊を招いたかの様な素人丸だし記事が出たりしましたが、その後の悉皆調査(しっかいちょうさ:対象エリアの全建物の調査)によって、建物の倒壊は、柱や耐力壁のバランスの悪さ(=直下率の低さ)が原因と言うことが明白になったのです。

これは、住宅と言う構造物全体から見た場合、重要なのは柱と耐力壁の位置であり、屋根材の重さの影響ははるかに小さいと言うことです。

 

5.まとめ

これまでの通り、陶器瓦はその他の屋根材と比較した場合、重いと言うのは確かで地震に有利とは言えません。

しかし、陶器瓦には、そのデメリットに勝る断熱性、耐候性、重厚感など建物にとって色々と有効な機能を持っています。

十分に対策ができるデメリットに過剰反応せず何十年と住み続ける我が家で日々どんな暮らしをしたいのか?を考えれば、優れた長所の多い陶器瓦は十分に採用価値の高い材料と言えます。

豆知識くん

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